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福岡地方裁判所 昭和52年(ワ)1472号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

判旨の前提として認定された事実関係(但し、2(六)をのぞく――本訴の請求原因)は、大要次のとおりである。

1 原告は、原告加盟の販売業者及び原告との間でいわゆるクレジットカードその他の証票を利用して原告加盟店から商品を購入する契約を結んだ者の相互扶助を事業目的とし、原告と契約した利用者は、原告加盟店で商品を購入できるクレジットカード等の交付を受けて、それと引きかえに原告加盟店から商品を購入することができるが、その場合、該購入代金は原告が利用者にかわつて原告加盟店に立替払し、利用者としては、原告に対して、右立替払を受けた代金に一定額の手数料を加えて分割払していくことになつている。

2 原告は、昭和五〇年八月五日、訴外有限会社高原産業に勤務する分離前の相被告原山泰保、被告氏田市衛、同矢嶋喜代美(旧姓山崎)、同古賀満子、同鶴崎好道及び同後藤久美子(旧姓森部)との間で、左記約定に基づく職域団体加入契約を締結し、その結果、右原山及び被告らは、いずれも原告の会員となつた。

(一) 原告は、被告らに対してクレジットカード及び整理票を交付する。これに対し、被告らは、右整理票の代金を後記(四)の立替金及び手数料に加算して支払う。

(二) 被告らは、右クレジットカード等により原告加盟店から商品を購入することができる。

(三) 原告は、会員の右クレジットカード等による購入商品の代金を毎月末日に締切り、直ちにこれを原告加盟店に立替えて支払う。

(四) 被告らは、自己の購入した商品の立替金に一〇パーセント以内の手数料を加算し、原告が立替払いをした月の三〇日を第一回とし、それ以降毎月三〇日を支払期日として、原告の指定する期間内にその指定する金額に分割して支払う。

(五) 被告らは、右分割弁済金の支払いを一回でも怠つたときは、期限の利益を失い、直ちに残額全部に日歩五銭の割合による遅延損害金を付加して支払う。

(六) 被告らは、そのそれぞれが原告加盟店から購入した商品の立替金につき、互いに連帯債務者となつて、原告に対し、その全額を弁済すべき責任を負うものとする。」

【判旨】

三進んで、被告らが原告に対して負担する責任の範囲について判断する。

1 まず、被告鶴崎を除くその余の被告らが、そのそれぞれが原告加盟店から購入した商品の立替金につき連帯債務を負つているかどうかについて検討するに、<証拠>によれば、高原産業では、原山が代表取締役の地位にあり、かつ、被告氏田が営業部長なる肩書を用いて同訴外会社の営業活動に当り、右両名に経理担当の被告古賀を加えた三名が、同訴外会社のいわゆる正規の社員であって、被告矢嶋及び同後藤は、いずれもいわゆるアルバイト(臨時社員)として同訴外会社に勤務していた者であること、原告との間で本件加入契約を締結するに際しては、高原産業に勤務する従業員が職域団体の利用者グループを構成して、同訴外会社の代表取締役である原山が右グループの代表者となり、かつ、同訴外人の指示によつて、被告古賀が右契約締結の事務処理に当り、右契約締結に伴う入会申込書及び会員名簿(甲第一号証、同第二号証の一、二)を作成していること、そして、同被告及び被告鶴崎を除くその余の被告らは、原山及び被告古賀の勧誘と説明によつて右利用者グループを作ることに同意し、原告との間で本件加入契約を締結したが、それに伴つて作成した右会員名簿(甲第二号証の一、二)には、被告古賀及び同後藤はみずから、被告氏田及び同矢嶋は被告古賀に依頼して、そのそれぞれの印鑑を押捺したこと、なお、右入会申込書(甲第一号証)には、特約事項を列記した欄があり、又、右会員名簿(甲第二号証の一、二)には、入会者が記名押印する欄のほか、別紙として会員規約が編綴してあるところ、右特約事項及び会員規約中には、原告に加入する職域団体又は地域団体等の利用者グループにあつてはそのグループ構成員それぞれが互いに他の構成員の原告に対する債務(立替金その他)につき連帯債務者としての責任を負う旨の条項が記載されていること、以上の事実を認めることができる。これに加えて、証人林嘉明の証言及び弁論の全趣旨によれば、原告のようにいわゆる協同組合組織によつてクレジットカードによる割賦購入をする事業を行う場合において、これに加入する職域団体又は地域団体の利用者グループでは、そのグループ構成員各自が相互に人的信用を供与し合うのが常態であることが認められ、かつ、原告にあつても、そのような仕組みによつて運営されていることは、先きに認定したとおりである。

そこで、これらの諸事実に徴して考えると、他に特段の事情の見受けられない本件においては、原告との間に本件加入契約を結んだ被告らは、互いに、そのそれぞれが原告加盟店から購入した商品立替代金その他原告に対して負担する債務につき連帯責任を負う特約の存在を知り、かつ、それを前提として右契約締結に至つたものと認めるのが相当である。<証拠判断略>

2 次に、<証拠>を合わせ徴すると、原告に加入した利用者グループの会員は、クレジットカードと整理票を用いて原告加盟店から一定限度額までの商品を購入することができ、その代金は原告が立替払をしていくが、右クレジットカード及び整理票は一応記名式になつているものの、これを持参した者に対しては、原告加盟店は、それが原告に加入した利用者(会員)自身であるかどうかまではせんさくすることなく商品を販売し、原告も、その商品代金を当然立替払していく仕組みになつていること、そのため、右利用者(会員)との加入契約に当つて準拠される原告の規約(会員約款、甲第二号証の二)上においても、クレジットカード及び整理票の亡失盗難等による危険は利用者(会員)に帰せしめる旨定められており、本件加入契約も又、右規約に基いて締結されていること、これに対し、原告との間に本件加入契約を締結した被告ら(但し、被告鶴崎を除く。)は、いずれも原告より交付を受けるクレジットカード及び整理票がその性質上高度の流通性を有し、それだけに亡失盗難等の危険性をそなえていることを察知していたこと、かように原告の交付するクレジットカード及び整理票は、亡失盗難による危険性を内包している反面、それによつて購入できる商品の金額はかなり低額に制限されていること、以上の事実を認めることができ、この認定に反する証拠はない。

そして、右認定の事実関係を基礎として考察すると、他に特段の事情の見受けられない本件の場合においては、被告らは、本件加入契約の締結後、原告から交付を受けたクレジットカード及び整理票を利用してみずから購入した場合はもちろんのこと、そのクレジットカード及び整理票による購入限度額までは、みずからの意思に基くと否とを問わず、他の第三者がこれを利用して商品を購入した場合においても又、その危険を負担し、原告が立替えたそれら商品代金の支払に応ずべき義務を負つているものといわざるをえない。

(篠原曜彦)

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